結局、ちゃんと断ることが出来ていない。確かに真島くんの言う通り、気持ちを聞かれてはいるけど、はっきりとした告白はされていないから、断ることが出来ていないのも事実だ。

でも、やっぱり狡いのは私。家が近くなってきたからか、隣りに真島くんがいるのに、雅也さんのことを考えてしまっていた。本当に、最低かも。

こんな狡い私なんて、好かれる資格はないと思う。


「でも、紗菜。俺がいることをちゃんと覚えておいて。何かあったら、いつでも呼んでいいから」


「あ、うん」


何かあったとしても、自分で解決するから、圭司に頼らなくても大丈夫!と言い切ることが出来なかった。圭司を頼りたい気持ちと、圭司を忘れたくないという気持ちがあるからだ。

圭司の優しさに甘えてしまう。優しい圭司の手を取りたいと思ってしまう。気持ちを圭司に全部向けることが出来ないくせに…頼るなんて狡いのに。