過去恋に今の鼓動を重ねたら

「紗菜って、呼んでもいい？今日、おじさんと由衣子さんが紗菜ちゃんって、呼んでいるのを見ていて、俺も呼びたいと思っていたけど、今更、紗菜ちゃんって、ちゃん付けで呼ぶのは変だし」


「真島くんが私をちゃん付けで呼ぶの？なんか笑えるくらいおかしいね。クスッ」


笑えるというよりも気持ち悪くもなるかも。だったら、ちゃんは外してもらって方がいい。


「じゃあ、紗菜でいいよな？俺も圭司でいいから」


「あ、うん。圭司ね、分かった」


気付けば、見慣れた景色が見えてきて、家まであと10分くらいの距離だった。思ったより早くに帰れた。雅也さんに連絡したほうがいいかな。

今からならまだ会える時間だ。夕食を一緒に食べることも出来る。


「結局、俺もずるいよね。決定的なことを言わないで、紗菜の気持ちを探っているんだから」


「え？そんなこと…真島く…圭司はずるくないよ。私が曖昧でずるいから、それがいけなくて…」