過去恋に今の鼓動を重ねたら

私だけが飲んでしまったことは、運転手である真島くんに申し訳ないことだった。


「いいんだよ。俺は最初から飲むつもりがなくて、車で来たのだから。これを遠くまで走らせられたことで充分嬉しいしね」


「そう?なら、良かったけど」


本当に車が好きなんだな。楽しそうに運転をしている。


「それに、河原を隣に乗せられただけで嬉しいしね。デートしている気分だよ」


そう言って、左手が伸びてきた。その手は、私の右手を捕らえる。車の中は密室だ。しかも、動いているから開けて逃げれない。

本気で逃げたいと思ってはいないけど、反応に困るというか気持ちが焦る。

真島くんを見るが、顔はしっかり前を見ていた。


「真島くん!ちゃんとハンドルを握らないと危ないよ」


ギュッと強く握られた手に動揺してしまう。だから、離して欲しい。


「河原は…無防備だよね。警戒心が足りないね。俺を何だと思っている?」