過去恋に今の鼓動を重ねたら

違う…感慨深くなっている場合ではない。真島くんは何を言い出したのよ。

言葉の意味を改めて考えた。無邪気な笑顔に見えたけど、良く見れば瞳の奥は笑っていない。


「真島くん、そういう冗談は言わないでよ」


「冗談?本気だけど?本気で河原紗菜が欲しい」


ドキン!

心臓が跳ねた。


社長が待っているであろうログハウスの前で本気だという告白。しかし、受け入れるわけにはいかない告白だ。

だから、断れなくてはいけない。それなのに、なぜか真島くんの手を取りたくなっていて、断るという言葉が出てこない。


「おい、来てるなら早く中に入れよ」


見つめ合っていた私たちは、突然開かれたドアのほうにハッと視線を動かした。


「ああ、今入ろうとしていたとこだよ」


「あ、お疲れさまです。今日はお招きいただき、ありがとうございます。あの、これ…」


近所の和菓子店で人気の水饅頭を手土産として、持ってきていた。