過去恋に今の鼓動を重ねたら

「3年前に亡くなってしまったけど、不動産会社を経営していたよ。今は、社長とうちの母親の兄である伯父が継いでいる」


「やっぱりお金持ちだね」


「河原は玉の輿願望でもあるの?」


真島くんの後ろに続いて、壁と同じ木のドアの前に立つ。開けようと手を伸ばしていたのに、その手を下ろして、私のほうに体ごと向けた。


「玉の輿?そんなのないよ。貧乏は嫌だけど、普通の暮らしが出来れば十分だと思うもの」


「そうか」


「うん…うん」


本当に玉の輿にのりたいなんて 思ったことはない。お金持ちに憧れるみたいなところはあるけど、望んではいない。


「なんだ…」


「え?」


「玉の輿願望があるなら、会社を継ぐのもいいかなと思った。それで、河原が手に入るなら尚更ね」


楽しいことを思い付いたよう無邪気な笑顔を見せる。こんな笑顔もあの頃と変わっていない。今日は昔を思い出すことが多いな。懐かしい。