「あ、そうだ」


出ようとした雅也さんがドアの前まで行ったところで立ち止まり、振り返った。


「はい?」


「今夜も用事があって、行けない。明日も実家に行く用事があって、会えなくて、明後日も無理なんだ」


「ああ、そうなの?うん、分かった。私、まだ病み上がりだし、のんびりしているから大丈夫」


今週はずっと用事があると言っていて、まともに会えていない。会社で毎日顔を合わせているから、全く会えていないのではないけど、どことなく物足りなく感じたりもする。

だけど、どうしても会いたいと思ってはいない。土日は全く顔が見れないけど、月曜日になれば、また見れる。だから、2日くらい会えなくても大丈夫。

それに、一人でのんびりしたいと思う気持ちもあったから、躊躇うこともなく了承した。


「理由とか聞かないんだな」


「え?」


「紗菜はいつも物分かりが良くて助かるけどね」