過去恋に今の鼓動を重ねたら

朱莉に言われて、落ち着きのない自分に渇を入れたくなる。

しっかりするんだ、私。


「あ、すみません。何か用ですか?」


「うん、忙しいところで悪いんだけど、一緒に会議室に行ってもらえる?」


「はい」


ファイルを数冊持つ雅也さんの後に続く。

何をするのかは言われなかったが、会議室でやるとすれば、資料作成だろうと思い、クリップやホチキスを持った。


小会議室に入り、ファイルを長机に置いたので、その近くに私も持ってきたものを置く。


雅也さんが座り、隣の椅子を少し下げたので、私はそこに座った。もしかしたら、仕事の話ではないかもしれない。資料作成と見せかけただけなのかも。

何か疑っているのだろうか?


「紗菜」


「はい。あの、何をすればいいのでしょうか?」


雅也さんの意図に気付かない振りをする。

膝の上に置いた手を握られる。何を言おうとしているのか?何を考えているのか?

背中に嫌な汗が流れてくる。