過去恋に今の鼓動を重ねたら

「え?恋?そんなことないよ。ただの同級生なんだから」


雅也さんとのことを内緒にしているから、私はフリーだと思われている。だから、いろいろと誘われることもあって、断るのに苦労することもしばしばだ。


「えー、だって」


「何よ?」


朱莉は小声になった。何が言いたいのだろう?私は朱莉に耳を近付ける。


「名刺をもらったの見ちゃいましたよ」


いたずらをしてしまったという感じに舌を少し出す。見られていたとは思わなかったけど、つい隠してしまったのはやっぱりまずかったかな。ポケットの上に手がいく。

メールをしてと書かれていた。連絡をするのが躊躇われる。


「何かあったら教えてくださいね!」


またしても嬉しそうに肩を叩く。


「あ、郵便見て来るね。今日請求書が来る予定だった。来てるかなー」


返事に困ったから、誤魔化して席を立った。不自然なのは分かっているけど、これ以上この話をしたくなかった。