分かってる。部屋に入れたことも、抱き締められて抵抗しないことも、立派な裏切り行為になる。

でも、雅也さんのあっさりとした抱擁は物足りなさがあった。

それに引き換え、真島くんの抱擁は優しい温もりが伝わってきて…私の心が求める。


「もうちょっと安心させて…もう一回だけギュッとして…」


真島くんの優しさに甘えてしまう。具合が悪いときは人の温もりが恋しくなる。


「まったく…仕方ないな。ほら…」


ふわっ…


真島くんの胸に頭をつけ、両腕の中におさまった。

あー、なんか気持ち良い。


ゆっくりと後頭部から背中を何度も撫でてくれる。心が落ち着く。

今日はずっと誰かに撫でてもらいたかった。雅也さんに求めることが出来なかったから、真島くんになってしまったけど…ものすごく安心できる。


「ありがとう」


何分経ったか分からないけど、真島くんの胸をそっと押して、離れる。


「うん。じゃ、おやすみ」


「おやすみ。気をつけて…」