「……やっぱり!」
俺はすぐに通話ボタンをタップした。
「もしもし、和也?!」
『――亜貴』
明らかに声のトーンが低い。
それに、電波状況も悪いらしく微妙に雑音が入ってくる。外に、出てんのか?
「今どこに居る?これから会えねーかな?」
『……今は学校の近くの、…公園に居るヨ』
「わーった!すぐに行くから待ってろよ!絶対!待ってろよ!……逃げんな、和也!」
返事も聞かず、無理矢理にその場に縫い止める強引な言葉。でも、どうしても、会って話がしたかった。しなければならないと思った。
「……っし!」
重要な役割を果たしてくれたスマホを再び胸ポケットに仕舞って、立ち上がりながら鞄を肩に引っ掛ける。そして、
矢木さんの手を引いた。
「ちょ、……待て!」
「いいから!矢木さんも!」
「…バッ!今の、笹原君だろう?私が行ってどうする」
必死で手を振り払おうとする矢木さん。でも、やっぱり女の子だ。流石に簡単には解けないらしい。一応、スポーツ系男子なので、その辺は舐めないで貰いたい。
なにより。和也だけじゃない。矢木さんも“逃がさない”と、手に力を込めた。
「俺達はもう抜け出せないんだろ?」
「!」
「だったらさ。協力しなきゃ、じゃねーの?」
窓の外の太陽は既に傾きかけていて、美しく濃い橙色の強い光を放つ。カーテンの引かれていない部屋全体を万遍なく温かく包み込む空気は多分、俺に味方してる。
案の定、彼女は何とも言えないといった表情で固まってしまった。



