断罪校則

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穏やかな時が流れた。

あんな事があったのに、何故だか私は屋上を気に入ってしまったみたいで、昼休みや放課後には必ず足を運んだ。そして、それにくっついてくる相変わらず変な教師。

いつしか私はきちんと先生と呼ぶようになり、その先生は二人きりの時だけユズリと呼ぶようになった。


『君は必ず俺を求めてくる。必ず、な?』

あの言葉は嘘じゃなかったのかもしれない。先生は、私に色々と新しい世界を見せてくれた。楽しませてくれた。

知らなかった感情も、欠落した心も。

全部、先生が教えてくれた。こんなにも穏やかで優しい日々は初めてで、何だか妙にくすぐったい。知らなかった。こんな気持ち。

自分には一生縁のないものだと決めつけていた。人の温もりなんて、偽善と愛憎で穢れた汚いものだと思っていたのだから。

けれど、違う。

違う事もあるんだって、やっと理解出来た。単純に、好きだの愛だの。そんな軽いものではない。今の私に必要なのは、この“辻 春人”という人物。

先生はそれを全て見透かしているかのように、いつも傍に居てくれた。笑ってくれた。時には怒ってもくれた。私という存在を真正面から受け止めてくれた。生意気で、

素直になれない、可愛げのない私を。


「俺ね、心を許した奴だけ下の名前で呼ぶ事にしてんの。なんか特別感でるじゃん?」

そう言いながら頭に乗せられた手が、大きくて温かかくて。リズムを取るようにゆるゆると髪を梳く指の動きも。ご機嫌な鼻歌も。何もかもが尊いことのように思えた。

「だからユズリは特別!…皆には秘密な」

先生は知らないだろう?私が、どれだけ嬉しかったのかを。涙が出そうになるぐらいの幸せを噛み締めていたことを。

いっそ時が止まってしまえば良いのにと、心から願ったことを。