断罪校則

ねっ!と極々自然に差し出された右手を手の甲で払い除け、遠慮も糞もない。舌と口腔を使って忌々し気に音を鳴らした。

「……馬鹿か、お前」

たかが教師。そんな奴に私の何が解るというんだ。自分にそっくり?ふざけるのも大概にしてくれ。同情も同調も御免だ。

虫唾が走る。

本来なら、舌打ちと共に吐き出してしまいたかった悪態の限り。けれど、そうする事で自分が負けてしまいそうな気がしたので、喉まで出かかったモノをグッと体内へと仕舞い込み、踵を返す。

ふわりと浮いた、自分の髪の毛。




「……ユズリ!」

ひらり、ひらり、

「君は必ず俺を求めてくる。必ず、な?」

ひらり、ひらり、桜色。

ゆっくりと背中に、定位置に舞い戻る髪に、あり得ない熱と重さを感じた。花びらなんて似合わない。女の子らしい色なんて、私じゃない。



「!」

気が付いた時には走り出していた。

唇を噛締めながら只管に走った。無性に腹が立つ。苛々とする。あの男と居ると、調子が狂う。

もう関わるのは止めよう。無視をすれば大丈夫。そうやって生きてきたじゃないか。何度も、何度も、無視をして冷たい態度を取って。そうすればきっと諦めてくれる。

なんて、思っていたのに。





「矢木さん、おはよう!」

翌日、奴は何食わぬ顔で挨拶をして来た。しかも、爽やかな優しい先生の顔で。

その猫かぶりが余りにも完璧で、なのに嘘だと解っているから可笑しくって。昨日の決意は何処へやら。不覚にも笑いが込み上げ、堪らずククと肩で笑っていると、

「笑わないでよ、ユズリちゃん?」

直接耳に注ぎ込まれたリリック・テノール。ああ、クソ。本当にふざけるな。こんなの、

――反則だ。