「――オイ、教師がこんな所に生徒を連れて来てもいいのか?」
前言撤回。こいつ、とんだ食わせ者だ。
「こーら!オイ、じゃないでしょーに。つ・じ先生!それか、まあ?特別に春人でもいいけどなー。ユズリちゃん限定で」
教室に居る時とはまるで違う態度、表情に喋り方。そもそも、まず教師が生徒を危険な屋上へなんか連れては来ない。もっと言えば泥棒も青褪める慣れた手付きで、南京錠をヘアピン一本で開けるなんて。
職種、確実に間違っている。
「君さ、昔の俺にそっくりなんだよねえ」
「………は?」
にししと悪戯っ子っぽい、ガキみたいな笑顔で投げ掛けられた言葉の意味が解らず、自然と眉根が寄った。不快だ、こいつ。
「悪いが、意味が解ら…」
「だーかーら!俺にそっくりなんだってば。君は人と関わることが嫌いでしょ?」
「!」
「そーゆうの、痛々しくて見てらんないわけよ」
とん、と小突かれた額が僅かに痛んだ。
「……っ!」
「もう少し自分を見つめてごらん?」
そう言って微笑んだその顔は、教室で見た小犬のような笑顔と全く同じで。混乱する。
ひらり、ひらり、
春の突風によって運ばれてくる桜の花びら。それらの一部が、色気のない灰色のコンクリートに淡く美しい模様を描いてゆく。
「兎に角、これから一年間!嫌でも君は俺の生徒だし俺は君の担任。せっかくなんだから仲良く行こうじゃないの?」



