断罪校則

「……マジか」

矢木さんが屋上を去った後、俺は力無くその場に崩れていく。心臓は口から出てくるんじゃないかってほど暴れてるし、頬の火照りもまだ治まりそうにない。

「なんだっつーんだよ」

情けないというか何というか。童貞のピュアさを舐めないでくれませんかね。マジで。

「ホント、ふざけんなよなあ」



「ふざけてるの、どっちカナ?」
「うひッ?!」

突然、自分の頭上から降ってきた声。

「な、な、な…!和也?」

太陽の光が眩しくて、顔がはっきりと見えたわけではないけれど。幼なじみの声を聞き間違えたりはしない。少し高めの甘い声。

「ハイ、ご名答だネ」

鉄で出来た梯子を、軽快な足取りで降りながら和也はにっこりと微笑む。

そんな余裕の親友とは反対に、俺は金魚のように口をパクパクと開けたり閉じたりしながら呆気に取られている状態のままで。

「お、おま…ちょ、いつから居たんだよ!」
「ん?亜貴が屋上に来る前から居たよ?」

俺が、屋上に来る前から…


――やられた!

昼休み前の授業、和也は体調が悪いと言って保健室に行っていた。俺としては好都合だと思っていたのに、どうやら和也の仮病にまんまと騙されていたらしい。

「亜貴さ、隠し事出来ないよネ?」

へらりと笑う和也に、返す言葉が見つからない。のに、目も逸らせない。

「悪いとは思ったんだけどネ、亜貴がトイレに行っている間にメールを確認させて頂きマシタ」

トン、と。不意に指先が胸の辺りに触れてくる。そう、矢木さんの行動をそっくりそのまま。くそ、なんつー性格の悪さ。

「ゼーンブ、見させて貰ったよ?」

その言葉を聞いて、眩暈がした俺に罪はないと思います。ちくしょう。

「まさか亜貴と矢木さんのキスシーンが見られるとは流石に思ってなかったけどサ」
「や!ちょ、その、あれは…」

しどろもどろになる俺を見て、和也は一瞬だけ柔らかく微笑む。そして、一つ大きな溜息を吐いて、言葉を続けた。

「亜貴は何を隠しているの?」

真剣な眼差し

「そろそろ話してくれても良いんじゃナイ?」
「…和也」


もう、隠せないな。

ちゃんと話そう。今まであった事を全て。矢木さんから送られて来たメール。そして、再三、忠告されていた事を。