断罪校則

「やっぱり和也も寝られなかったんだな」


翌朝、

「…まあネ」
「ははっ、クマひっでえぞ」
「そういう亜貴も、二頭カワイイの飼ってるケド?」
「あらヤだ」

自分と同じく目の下にクマを作っている親友を見て、苦笑する。

「まあ、仕方無いよな。あんなメールが来たんだしさ」
「ウン。かなりのインパクトだったからネ」

あれから俺は、

風呂に入る事も飯を食う事も後回しにし、即行で布団の中に潜り込んだ。

いつもは開けっ放しにしているドアと窓にも鍵を掛け、カーテンまできちんと閉めて。

そう、完全にビビッていたのだ。まあ、それが俺だけじゃなかったって事にちょっとだけ救われたけど。和也マジサンキューです。

でも、その代償も大きかったわけで。

揃って遅刻をしてしまった俺達は、出して貰える予定になっていた試合に出して貰えず。先輩と顧問から、飲み物を調達して来いと体の良い罰則を与えられていた。

「あ゙ー!試合出たかったー!」
「しょうがないよ」
「まあ、正直出して貰えたとこで気が散ってそれどこじゃねえか」
「…だろうネ」


「ねえ、亜貴は何か心当たりある?」

和也からの質問に、ピタリと足が止まった。今、俺の頭のなかには確実にあの言葉が蘇っているから。矢木さんに突き付けられた、あの言葉が。

――君達ハ目ヲ付ケラレテイル







「…や、それがないんだよな」

何となく、和也には未だ言い出し辛くて。止まっていた足を、意図的に大きく一歩踏み出した。なんでもないよって顔で。態度で。和也に隠す為に。騙す為に。

「ウーン、そうだよネ」
「和也だってないだろ?」
「…ないネ」
「困ったな」
「ん」

「「―――」」

ガサガサと、ナイロン袋が擦れる音と二人の足音だけが響く。続かなくなってしまった会話を無理やり広げようとはせず。俺と和也は足早に学校への帰り道を急いだ。

きっとお互い同じ事を考えていた筈だけど、それを口に出す事はなくて。


重たい空気の中、

重たい袋を提げて、二人並んで歩いた。


俺はまだ知らない。これから先、自分に降りかかる“悪夢”を。逃れられない、運命を。