私は最後になってやっと勇気を振りしぼったが、それまで見て見ぬふりをしていたのだ。

 重みを増した涙が、一つの塊となり、机の上に零れ落ちた。

 泣いたら理由を説明しないといけない。そう思っても、あふれ出した涙がすぐには止まらない。

 私はいけないと思いながらも、泣きじゃくるのをやめられなかった。

 芽衣の母親が悲しそうに微笑むのに気付いても。

「ごめんなさい」

 私はやっとの思いで涙をとめ、そう声を絞り出した。
 その言葉に、彼女が悲しそうに微笑んだ。

「あの子はやっぱり学校でいじめられていたの?」

 私は驚き、彼女を見た。

「あの子が亡くなる少し前に様子がおかしかったの。今まで話に出ていた友人の話も出てこなくなって、学校で何かあったんじゃないかと。でも、あの子に聞いてもなんでもないというし、前日にあなたの話を聞いて、思い過ごしだったんだと思ってた」