「手伝いますよ。持ちにくいでしょう」

「でも、悪いわ。タクシーを拾うかするから」

「気にしないでください。私もまっすぐ帰りたくない気分だったんです」

 彼女は戸惑いを露わにするが、すぐに目を細めて笑う。

「ありがとう」

 私は彼女からケーキの箱を受け取る。ケーキというと誕生日という先入観がある。芽衣は一人っ子だったはずだ。彼女か、芽衣の父親の誕生日なのだろうか。

「今日、芽衣の誕生日だったの。だから芽衣の好きなものをたくさん作ってあげようと思ったのよ。本当はダメなのかもしれないけど」

 私の心の中を見越したかのように、彼女は言葉を届けた。

 私はそのたくさんの買い物を見て納得する。

 芽衣の家はそこから五分ほどあるいたところにあった。私は荷物を届け玄関先で別れようとした。

「何かお礼でも出来れば良いのだけれど、良かったらケーキでも」

「それは芽衣のなので。私が勝手に申し出たので、気にしないでください」