その時、私の足もとにじゃがいもが転がってきた。拾い上げ前を見ると栗色の髪の毛をした女性がふらふらとした足取りで歩いている。私と彼女の間にもう二つほどじゃがいもが転がってる。

 私は途中に落ちているじゃがいもを拾うと、テンポ良く歩く女性を呼び止めた。目鼻立ちのしっかりとした綺麗な人だ。

私はすぐに彼女が誰か気付いてしまった。彼女を見たのは二度目になる。

「これ、落ちてましたが、袋に穴があいてませんか?」

 女性は不思議そうに自分の持っていた袋を見て、そこで穴が開いていたのに気付いたようだ。何かのはずみで穴が空き、そこに入っていたお菓子が穴を拡大させたようだ。

「ごめんなさい。うっかりしていて」
 
 その時、彼女が目を見張る。私が誰か気付いたのか、見覚えがあると思ったのだろう。

「私、芽衣さんのクラスメイトだった」

「覚えているわ。芽衣の葬式に来てくれた竹下彩乃さんね。わざわざありがとう」

 彼女はじゃがいもを受け取ると、ビニール袋を抱える。

 彼女の持つケーキの箱が傾いてしまったのが気になる。