明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。

 私は保田と書かれた家のチャイムを鳴らす。

インターフォンから女性の声が聞こえた。

私が自分の名前とクラスを名乗ると、待っていてという言葉と共にインターフォンのライトが消える。

 そして、ドアが開き、小太りな女性が出てきたのだ。

細身でがっしりとした優香とは全く正反対の体型だ。

だが、二重の瞳や、丸みを帯びた鼻、厚い唇など顔のパーツは優香と良く似ている。

 私は深々と頭を下げる。

 優香が学校を飛び出してから、誰もその事を正岡には言わなかった。

出欠を確認しに来た正岡は、優香を遅刻扱いしていたのだ。

その後少しして優香が学校を休むという連絡が入ったらしく、正岡はその旨をクラスメイトに律儀に伝えていた。


 私は明香ともめるシーンを見ていたため、どうしても放っておく事が出来ずに優香の家にきたところだ。

「わざわざごめんなさいね。優香は突然学校から帰ってきて、それ以来部屋から一歩も出ないのよ」

 彼女は玄関先にある階段をちらりと見る。