その様子を見て、クラスメイトは愉快そうに笑う。

「さすがにそれくらいにしておけば?」

 倉橋が諌めると、クラスメイトの視線が彼に向く。

「お前が犯人なんじゃないか?」
「違う。だいたい何でそんなことをしないといけないんだよ」
「お前の荷物を調べてから言い訳を聞くよ」
「やめろよ」

 倉橋が抵抗しようとするが、すぐにほかの生徒が抑え、彼の所持品を調べていく。

 誰かを善意で庇おうとしたら、その人を犯人に祭りあげ、その人の所持品を調べていく。

 結局黙っているのが一番幸せだ。

 その状況は明香のいじめを見過ごしていた時と似ている気がした。

 私はどう動いていいのか分からず、躊躇ってた。

 何も見られて困るようなものはないとは思う。だが、私にとってどうってことないものでも、他者から見ると違うかもしれない。

 そう思うと、動けなかった。

 倉橋君の鞄に伊田君が手を伸ばしたとき、教室の扉があく。