「だから、誰か分かったら、とめてほしいの。先生に言ってくれればこちらから注意するわ。岡部君にもできれば言ってほしいの。

彼は悪い生徒じゃないというのは分かるけど、気分のままに行動するところがあるから」

「分かりました」

 佐田先生は岡部君が犯人ではないかと思っているのだろうか。

それとも岡部君にはほかに明香から訴えられそうなことをしているというのだろうか。

ただ、先生なりに岡部君を心配しているというのは伝わってきた。

 彼が明香の両親に訴えられでもしたら、それこそ嫌だ。
 もし、犯人なら尚更だ。

 私は佐田先生に別れを告げ、昇降口まで行く。そして、出て行こうとした岡部を呼び止めた。

 彼は驚きを露わに振り返る。

「一緒に帰らない?」

「いいけど、先生に説得してくれとでも言われた?」

 タイミングのせいなのか、実は私が階段にいたのに気付いたのか、佐田先生との話を聞いていたのかは分からない。

だが、嘘を吐いても仕方ないので、素直に認める。