彼を追おうとした佐田先生が視線をちらりと上に向けたため、目が合った。

 彼女は気まずそうな笑みを浮かべる。

 沈黙が流れ、私は迷った末に問いかけることにした。

「何かありましたか?」

 彼女はためらいがちに微笑んだ。

「最近、クラスで奇妙な噂が流れているのだけれど、詳しいことを知らない?」

 恐らくそれは明香たちに関することなんだろう。

「知っているけど、誰が何の目的でやっているかは分かりません」

「生徒からクレームもあがっているのよ」

「古賀さんの両親ですか?」

 その言葉に佐田先生の顔が引きつる。恐らく当たっていたのだろう。

「詳しい事は言えない。でも、このままだと、その問題のある生徒をつきつめて訴えるって言っているの。そして、その生徒の親は岡部君が主犯だと言っているのよ」

 私はその言葉にぞっとした。でも、明香の両親であればありえなくもない。