夫婦の定義──君が僕のすべて──

リュウが煙を吐きながら笑う。

「妊婦のわがままに付き合う旦那も大変だろ。オレの姉貴、ハタチの時にシングルで子供産んだんだけどな、旦那がいない分、弟のオレにアレコレわがまま言うわけよ。やれアレが食べたいだの、やれコレが嫌だの、しまいには、なんでオマエはギターじゃなくてベース弾いてんだとか、わけのわからん事も言い出すしな。」

「なんだそれ。ベーシスト拒否?」

「その低い音が腹に響いてイライラするとか、横暴だろ。元ヤンだから怒り方が半端なくヤバイんだよ。家でベース弾けねぇの。」

「そん時、リュウいくつ?」

「18だったかな。まだロンドン行く前。親の店で美容師の見習いやってた頃。姉貴も親の店で美容師やってたんだけどな、つわりでしんどい時はパーマ液とかシャンプーの匂いもダメで、しばらく休んでた。」

「そうそう。匂いに敏感になる。この間、ずっと気に入って使ってた柔軟剤の香りが嫌になったって泣き出した。」

「そんな事で?」

「うん。次の日は、あると思って特売日に買わなかった醤油の買い置きが家になかったって怒ってた。」

「醤油で怒るか?」