「――知りません…」

答えたとたん、また頬に衝撃が走った。

切ってしまったのか、口の中に血の味が広がった。

「とぼけるんじゃねえ!」

何故だかよくわからないが、上から怒鳴られた。

「――は、母が…母が、何か…?」

口が痛くて、上手くしゃべることができない。

「何かって、そいつが俺たちに500万も借金をしてるんだよ!」

「――しゃ、借金…!?」

彼らの口から聞かされた事実に、笙は驚いた。

(母さんが借金って、どう言うことなんだよ…!?)

笙は訳がわからなかった。