「イケメンだよね」

話題は先ほどコーヒーを運んできた笙のことである。

笙は黒髪短髪と俳優のように整った顔立ちが特徴的な美青年だ。

ダサいと捉えがちの黒縁眼鏡も、彼の魅力をいい具合に引き立たせている。

その美貌から喫茶店に来店してくる女性客の大半は、彼の虜である。

笙のことで話題になっている女性客を、カウンターで玲奈がコーヒーを淹れながら耳を傾けていた。

「あんな人が彼氏だったら、自慢しちゃうかも!」

そう言った女性客に、
(あんな人が彼氏って、あの子は意外と毒舌なところがあるのよね)

心の中で玲奈は言った。

「アタックしてみる?」

そう言った女性客に、
(やめなさい)

玲奈はポットを置いた。

「でも、ウエイターさんって彼女がいるんじゃない?」

女性客が心配そうに友人に聞いた。