「じゃ、そろそろ始めるとするか」

そう言った笙に、
「了解」

玲奈は答えると、足元に置いてあった黒板を持ちあげた。

店を出ると、黒板をイーゼルに立てかけた。

ふと空を見あげると、雲1つない青空が広がっていた。

まるで自分たちの門出を祝福しているみたいだと、玲奈は思った。

「――やっと、歩き出すことができるんだな…」

玲奈は呟いた後、フフッと笑った。

そして店内へと入って行くと、最後に確認をするようにグルリと店内を見回した。

「午前10時、喫茶店『柚葉』本日開店です」

玲奈の澄んだ声が店内に響き渡った。