笙と彼女は隣を一緒に歩いた。

「あんた、名前は?」

笙は女子大生に聞いた。

姉以外の異性に“あんた”を使うのは、生まれて初めてだった。

「千葉明菜(チバアキナ)です」

女子大生――明菜が自分の名前を言った。

「明菜ちゃんね、年齢は?」

笙の質問に、
「19です」

明菜は答えた。

「へえ、大学生なの?」

「はい」

明菜は首を縦に振ってうなずいた。

「そうなんだ」

笙が言ったら、
「あなたの名前は何ですか?」

今度は明菜が聞いてきた。

「寺師笙」

笙は自分の名前を名乗った。

「ショウ?」

不思議そうに聞いてきた明菜に、
「竹かんむりに生まれるって言う字で“笙”なんだ。

結構珍しいでしょ?」

笙は答えた。