呆気ないことの終わりに、
「何だよ、人騒がせな」

野次馬が次々と退散して行った。

笙もこの場から退散しようとした時、
「――あの…」

後ろから声をかけられたので振り返ると、先ほどの女子大生がいた。

「何か?」

「…ありがとうございます」

女子大生に頭を下げられた。

「どういたしまして」

笙はその場を去ろうとした。

「あの、手伝ってもいいですか?」

荷物を指差すと、女子大生が言った。

「いいけど、結構重いよ?」

そう言って荷物を差し出した笙に、女子大生は首を縦に振ってうなずくと荷物を持った。