春。

「夏樹〜早くっ!!」
私はまだ体に合っていないのか少しブカブカした制服を身に纏いこっちに向かってくる友達、早野夏樹に手を振った。

「相変わらず元気だね〜。揄癒は」
呆れながらも優しく笑ってくれる夏樹。

夏樹とは小学校からの仲良しで高校でさえも一緒になった私の数少ない仲の良いと言える友達だった。

「だって!今日から高校生だよ!?格好いい人居たらどつしよ〜っ!ナンパとかされたら!!きゃーっ!!」
1人で舞い上がってる私に「はいはい」と冷静に対応する夏樹。

そんな風に馬鹿な会話をしていたら私達が3年間通うことになる柳農業高校に着いた。
クラスを確認して『やった!夏樹も一緒のクラス!』と心の中で小さくガッツポーズしながら喜ぶ私。

しかし隠しきれていなかったのか思い切り表情にニヤニヤしてたのが出たらしく夏樹に「顔」と小さくツッコミされた。

クラスに入ると既に半分くらいの人が居た。
机でジーッとしてる子。
中学からの仲良しなのか3人組で固まって話してる子。
朝から課題に追われてる子など。

私は自分の席を確認して指定の位置に座った。
隣の席は夏樹で少しホッとした。

「おはよ!」
私の前に居た席の子が後ろを振り返り挨拶をしてきた。

「お、おはよう?」
急な事だったので疑問形に返してしまう私。
それに笑いながら
「はっは!何で疑問形なの〜?笑」と言われる。

「え、嫌その。びっくりして笑」と縮こまりながら返す私。
うわ、これ最初から失敗したやつだ。。
馬鹿ね〜。もっと面白いこと言えよ!
と、脳内で1人会話。

「面白い子!私山田真希って言うの!よろしくね!」
と、自己紹介。

「わ、私山田揄癒(ゆい)。よ、よろしくデスッ!!」と、釣られて自己紹介。

「なぁに〜?揄癒にしては頑張ってるじゃん?友達出来た?」と後ろから抱きつきながら言ってくる夏樹。

「ま、まだ友達になった訳じゃ」

「え?友達じゃん?私ずっとそう思ってたよ笑?」
すかさず言ってくる真希。

何か友達って言ってくれるのが凄く嬉しい。。
心の中で小さく喜んだ。

ガラッと急にドアが開いて髪を1つに束ねた若い女の先生が入ってきた。
「席に着いて下さい。」
教卓の前で話す先生に立っていた生徒が自分の席に戻る。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。私は貴方達の担任をやることになった葉先萌子と言います。担当教科は草花です」
淡々と自己紹介していく先生の話をボーッと聞きながら私はある1人の先生の事を思い出していた。