「書類にサインも貰ったし、後戻りは絶対に無理だからね」

 紫羽さんが妖艶な笑みを私に向ける。


 怖い……


「ひっ……」


 どうしよう……

 どうしようどうしようどうしよう!!


 人を殺すなんて、私にはできないよ!!


「安心して。私達が殺すのは、悪人だけよ。
 死刑が迫ってる犯罪者や、自分の子供を虐待する親なんかを対照にしているの。だからこれは『殺す』んじゃなく、『掃滅』してるのよ」


 優しく私の頬に触れる紫羽さん。

 白くてしなやかなその手は、羽で包まれたように温かい。


「それに、黒魔法で『掃滅』するから自分がやったなんてバレないわ」


 何だか、また段々酔っていくような感覚に陥っていく……

 ……良いよね。悪い事じゃないんだし、黄太を生き返らせるためにも、やらなきゃいけないし……


「……分かりました。私、ブラッディキャッスルの住人になります……」


 気が付くと、私の口はそう動いていた。