「まあ、私は『音が見える』だけだから、殆どやることは無いんだがな」

日和はそういうと退屈そうに頬杖をついた。

さらっと髪が揺れる。

改めて日和を見ると、整った顔立ちをしている。

夜空を溶かし込んだような綺麗な瞳、スッと通った鼻筋、透明なリップクリームが施された薄い唇。

アシンメトリーなショートヘアはサフランイエローなのに、染めてるわけではないようで自然な感じだ。

……見ていてドキドキする。

さっきのカゴメ先輩と藜先輩とには『容姿』にだったけど、今は日和の『存在』にドキドキしてる。

最初はいきなり引きずられてここに連れて来られて、分けわかんない奴だと思ったけど、単にクールなだけのようだ。

佐月はさっきの説明の礼を言おうと、日和を呼ぼうとした時―――

「ぐっ……!!」

日和がいきなり頭を抱えた。


「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


目がカッと見開かれ、額には汗が浮かんでいる。

呼吸が乱れていき、徐々にヒューヒューと過呼吸のようになっていく。