私がお兄ちゃんを蓮さん、と呼ぶようになったのは、
いつだっただろう。
家は資産家であった祖父母の遺産を受け継ぎ、
父も会社の役員で。
世間で裕福層と呼ばれるような家だった。
母は厳しい人で、
父はなかなか家に帰ってこなかった。
私はいつも、
学校から帰ってきたお兄ちゃんに遊んでもらっていた気がする。
私とお兄ちゃんは4歳差。
同じ学校になることはほとんどなかったけど
帰ってくるとすぐ構ってくれるお兄ちゃんが
大好きだった。
「日和!
いい子にしてたか~?」
「おにーちゃん!
ひより、いいこにしてた!」
「お、偉い!」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でる手が嬉しくて
ニシシ、と笑った。