そして、夏音と楽久は春亜の説明に静かに笑っていた。
ギィンゴォォーン♪
春亜がチャイムを押すと、いつものように古い鐘の音のような音が響いた。
その瞬間、ガァー、ガァーと屋根にいた烏が数羽飛び立つ。
「ひっ……!?」
咲久がビビって、一歩退く。
「大丈夫大丈夫。ただの烏だよ……あ、鼓さん!」
玄関から鼓がパタパタと出てきた。
「いらっしゃーい、春亜ちゃん、夏音ちゃん、それから咲久ちゃんと楽久ちゃんね。話は聞いてるわ。今、門の鍵開けるね!」
手際よく鍵を開ける鼓を見ながら、咲久が首をかしげる。
「『魔女』の……お姉さん?」
おそらく、暗くて不気味な季希のイメージと、咲久がその姉だと思っている鼓のイメージが似ても似つかないからだろう。
鼓は門を開くと、にっこりと優しい笑顔を向ける。
「貴女が咲久ちゃんね?私は時森 鼓。季希のお兄さんの彼女なの♡
今、夜園家の皆は仕事とかで忙しいから、私が保護者代理を勤めてるんだ!」
「へー……」
『お兄さんの彼女』の部分を強めて、嬉しそうに言う鼓に、咲久は不思議そうな顔で、ゆっくりと門をくぐった。