「おっはよー!」

次の日、春亜は元気に教室に行くと、何やら教室の隅に人だかりができているのが見えた。

「?」

何だろう。

ランドセルを自分の机に乗せてから、春亜も行ってみる。

「どーしたの?」

「あ、春亜ちゃん……」

一人の生徒を取り囲んでいたうちの一人が、困ったような顔で振り返った。

どうやら、一人の女子生徒が困っていて、その子の友達が慰めているらしい。

「何かあったの?」

「……あのさ、『ゆめうた』って知ってる?」

「あ、知ってる!」

季希の家のからくり時計で鳴っていた歌だ。

「でね、その歌を作った人が、この子のお姉さんなんだけど……」

「え?そうなの!?」

女子は自分の席で俯いてる女の子を指した。

鼻のあたりのそばかすが可愛らしい、大人しそうな女の子だ。

「……私、軽部 咲久(かるべ さく)。……春亜ちゃん、私の話、聞いてくれる?」