「自己紹介が遅れちゃったね。
 私は時森 鼓(ときもり つづみ)。季希のお兄さんの婚約者で、いつも仕事で忙しいご両親と、海外留学中のお兄さんの代わりに私が面倒見てるの」

「へぇ、そうなんですか〜」

案内されたリビングはかなり広く、天井からアンティーク調のシャンデリアが下がっていた。

口紅色のソファに座らされた春亜は、出されたクッキーと紅茶を口にする。

両方とも鼓の手作りらしく、店並に美味しい。

「それで、本題なんだけど……」

鼓の顔が真剣になる。

「季希は学校に行かないどころか、部屋からもあんまり出てこなくて。ずっと二階の自分の部屋に鍵を掛けて篭ってるの。
精神的なものかもしれないし、基本ほぼ放置状態なんだけど……。ろくに食事も取らなくてね、成長期だからもっと食べて欲しいんだけど……」

「え……」

 それはやばい。小学5年生はこれから身長が伸びたり、月経がきたりする時期だ。そんな生活は身体に悪すぎる。

「クラスの子が時々声を掛けに来てくれるんだけど、毎回毎回同じ子が話しかけてくると、季希はストレスを感じるみたいで」

「それで、まだ会った事の無いあたしが話し掛ければ、ちょっとは興味をもって部屋から出てくるかもってことですね?」

「そーゆーこと。ちょっと挨拶する程度でいいの。お願いして良いかな?」

「分かりました!任せてください!」