「理由は、それだけじゃ……ないけどね……皆が、言った通り……」

夏音が、資料集から少し顔を上げた。ちらりと見える大きな瞳が子リスのようだ。

クラスメイトの悪口を思い出して、春亜は眉をひそめた。

「季希ちゃんは、占いが趣味で……よく当たるって、去年までは人気者だったの……頭も良くて、ほんとに素敵な娘だった……」

会話が苦手なのか、夏音はゆっくりと間を開けて話す。

少々分かりにくいが、話を聞くと、季希と夏音は下級生の頃同じクラスだったらしい。

夏音の話によると、季希の占いがあまりにも当たりすぎて、クラスメイトたちから魔女だとか、悪魔だとか、言われるようになってしまったそうだ。

それが段々エスカレートし、悪質なイジメに変わり、傷心した季希は不登校になって、それから二年間、一度も学校に来てないとの事。

「酷い……」

出る杭は打たれる、というやつか。

心臓が少し痛くなるのを感じた。

「私……見てたのに……季希ちゃんが傷ついて泣いてるところも、イジメられてるところも、見てたのに……助けられなかった……」

スカートの裾をギュッと掴み、悔しそうに瞳を潤ませる夏音。

「……今、その季希ちゃんはどこに住んでるの?」

なぜだか、急に会ってみたくなった。

何か、声をかけたいと思った。