コホン。
バステトが咳払いをした。
「わたくしの出番です。」
そう言ってクルリと飛んだ。
頭の先から少しずつ姿をあらわしていく。
「お兄ちゃん!見て!!」
理央くんが指さす。
礼央くんは顔を上げて、理央の指の先を見る。
「マジかよ…。」
「礼央くん…。」
「マジで汐梨ちゃん?」
「うん…」
「夢みたいだ…。」
ゆっくり近付いてくる。
私の目の前に立つ。
礼央くんの手が私の頬に伸びてくる。
触れる手前でとまる。
その手は私に触れることなく、引かれた。
「俺の事覚えてる?」
「正直、今さっきまで忘れてた。この写真見て思い出したの。」
「そっか、汐梨ちゃんらしい。」
「私らしい?」
「うん。そうやって素直に言うところとか。」
「そうかな…?」
「約束は覚えてる?」
「うん。思い出した。結婚するって言って、この写真撮ったんだよね。」
「うん、俺の初恋で初めてのキスだった。」
「私も…」
目が合う。離すことができない。
さっき離れて行った手がそっと頬に触れた。
私にはこの雰囲気耐えれない!!
心臓が飛び出しそう!
「こうやってずっと汐梨ちゃんに触れたかった。」
「礼央くん…。」
触れた手の親指がゆっくり私のくちびるを撫でる。
「ずっと汐梨ちゃんが好きだった。もうすぐで日本に帰ってくる予定だった。帰ってきたら会いに行くつもりだったんだ。なのにっ!」
礼央くんが私をきつく抱きしめる。
泣いてるのがわかる。
「礼央くん…ごめん。私…死んじゃった…。」
涙が流れる。
お父さんやお母さん、美月や舞子とは違う愛おしさが込み上げる。
「汐梨ちゃん…好きだよ。俺、誰よりも君が好きだ。このまま俺のそばにいろよ!」
「ごめん…それは出来ない。」
「なんで?俺は構わない。幽霊でもなんでも汐梨ちゃんは汐梨ちゃんじゃんか。いてくれるなら、なんだっていい。」
『礼央様。』
バステトが私の代わりに話し出した。
「えっ猫?」
「はい。バステトと申します。汐梨様をこちらへ連れてきたのは、わたくしです。」
「じゃ、バステト。汐梨ちゃんをここに…」
「申し訳ありません。それは、それだけはどうしても出来ません。汐梨様は行かなくてはいけませんので。」
「行くって…」
聞こうとして礼央くんは黙った。幽霊の行き先なんて決まってるから。
「バステト!」
ソファにいた理央くんがバステトを呼んだ。
バステトのそばに勢いよく歩いて行くとガシッとバステトの首元を掴んだ。
「なっなにをするんですか理央様?!」
「お兄ちゃん、汐梨。ボクとバステトはボクの部屋で遊んでくる。じゃぁね!」
「待ってください!理央様話してください!」
「バステトっ!暴れるな!諦めてお前はボクと遊ぶんだ!」
そう言って理央くんはバステトを連れて出て行ってしまった。
「理央の奴、あれでもあいつなりに気を使ったんだ。」
「うん。そうみたい。」
二人で笑った。
二人になってから、ベッドに座り朝になるまで色んな話をした。
会わなかった年月を埋めるように。
好きな食べ物。
好きな音楽。
好きな異性のタイプ…。
「じゃ好きな女の子のタイプは?」
「そんなの決まってるじゃん。あの頃からずっと汐梨ちゃんがタイプの人だよ」
「じゃ私も礼央くんかな?!」
「じゃって、なんだよ!」
笑いながら私を見つめた。
まただ。さっきのドキドキの空気が私たちを包む。
真剣な顔になった礼央くんがまた私の頬に触れた。
思わず礼央くんのその手に触れる。
目が合ったままそらせない。
「汐梨…。」
『あっ呼び捨てされた。』
一層ドキドキが増す。
ゆっくりと顔が近付く。
頬の手が私の顎を上げる。
くちびるが重なる。
涙が零れ落ちた。
愛おしく思った人とのキスはこんなにも心が苦しくなるんだ。
礼央くんはそのまま私をベッドに押し倒した。
「礼央くん…?」
「何もしない。こうやって汐梨と抱き合って寝たいんだ。」
礼央くんは私を抱きしめながら寝息を立て始めた。
「汐梨様」
「はっはい!」
「シッ!礼央様が起きてしまわれます。」
「あっごめん。バステト、理央くんは?」
「理央様の部屋に行かれて程なくして眠りにつかれました。」
「えっじゃバステトなにしてたの?」
「わたくしだって気遣いは出来ますから。」
「あぁそっか、ありがと。バステト。」
「どういたしまして。では、そろそろ行きますよ」
「はい。」
私はそっと礼央くんの腕の中から抜け出る。
そばにあったブラウンケットを礼央くんにかけた。
「またね、礼央くん。」
寝てる礼央くんのおでこにキスをした。
バステトが咳払いをした。
「わたくしの出番です。」
そう言ってクルリと飛んだ。
頭の先から少しずつ姿をあらわしていく。
「お兄ちゃん!見て!!」
理央くんが指さす。
礼央くんは顔を上げて、理央の指の先を見る。
「マジかよ…。」
「礼央くん…。」
「マジで汐梨ちゃん?」
「うん…」
「夢みたいだ…。」
ゆっくり近付いてくる。
私の目の前に立つ。
礼央くんの手が私の頬に伸びてくる。
触れる手前でとまる。
その手は私に触れることなく、引かれた。
「俺の事覚えてる?」
「正直、今さっきまで忘れてた。この写真見て思い出したの。」
「そっか、汐梨ちゃんらしい。」
「私らしい?」
「うん。そうやって素直に言うところとか。」
「そうかな…?」
「約束は覚えてる?」
「うん。思い出した。結婚するって言って、この写真撮ったんだよね。」
「うん、俺の初恋で初めてのキスだった。」
「私も…」
目が合う。離すことができない。
さっき離れて行った手がそっと頬に触れた。
私にはこの雰囲気耐えれない!!
心臓が飛び出しそう!
「こうやってずっと汐梨ちゃんに触れたかった。」
「礼央くん…。」
触れた手の親指がゆっくり私のくちびるを撫でる。
「ずっと汐梨ちゃんが好きだった。もうすぐで日本に帰ってくる予定だった。帰ってきたら会いに行くつもりだったんだ。なのにっ!」
礼央くんが私をきつく抱きしめる。
泣いてるのがわかる。
「礼央くん…ごめん。私…死んじゃった…。」
涙が流れる。
お父さんやお母さん、美月や舞子とは違う愛おしさが込み上げる。
「汐梨ちゃん…好きだよ。俺、誰よりも君が好きだ。このまま俺のそばにいろよ!」
「ごめん…それは出来ない。」
「なんで?俺は構わない。幽霊でもなんでも汐梨ちゃんは汐梨ちゃんじゃんか。いてくれるなら、なんだっていい。」
『礼央様。』
バステトが私の代わりに話し出した。
「えっ猫?」
「はい。バステトと申します。汐梨様をこちらへ連れてきたのは、わたくしです。」
「じゃ、バステト。汐梨ちゃんをここに…」
「申し訳ありません。それは、それだけはどうしても出来ません。汐梨様は行かなくてはいけませんので。」
「行くって…」
聞こうとして礼央くんは黙った。幽霊の行き先なんて決まってるから。
「バステト!」
ソファにいた理央くんがバステトを呼んだ。
バステトのそばに勢いよく歩いて行くとガシッとバステトの首元を掴んだ。
「なっなにをするんですか理央様?!」
「お兄ちゃん、汐梨。ボクとバステトはボクの部屋で遊んでくる。じゃぁね!」
「待ってください!理央様話してください!」
「バステトっ!暴れるな!諦めてお前はボクと遊ぶんだ!」
そう言って理央くんはバステトを連れて出て行ってしまった。
「理央の奴、あれでもあいつなりに気を使ったんだ。」
「うん。そうみたい。」
二人で笑った。
二人になってから、ベッドに座り朝になるまで色んな話をした。
会わなかった年月を埋めるように。
好きな食べ物。
好きな音楽。
好きな異性のタイプ…。
「じゃ好きな女の子のタイプは?」
「そんなの決まってるじゃん。あの頃からずっと汐梨ちゃんがタイプの人だよ」
「じゃ私も礼央くんかな?!」
「じゃって、なんだよ!」
笑いながら私を見つめた。
まただ。さっきのドキドキの空気が私たちを包む。
真剣な顔になった礼央くんがまた私の頬に触れた。
思わず礼央くんのその手に触れる。
目が合ったままそらせない。
「汐梨…。」
『あっ呼び捨てされた。』
一層ドキドキが増す。
ゆっくりと顔が近付く。
頬の手が私の顎を上げる。
くちびるが重なる。
涙が零れ落ちた。
愛おしく思った人とのキスはこんなにも心が苦しくなるんだ。
礼央くんはそのまま私をベッドに押し倒した。
「礼央くん…?」
「何もしない。こうやって汐梨と抱き合って寝たいんだ。」
礼央くんは私を抱きしめながら寝息を立て始めた。
「汐梨様」
「はっはい!」
「シッ!礼央様が起きてしまわれます。」
「あっごめん。バステト、理央くんは?」
「理央様の部屋に行かれて程なくして眠りにつかれました。」
「えっじゃバステトなにしてたの?」
「わたくしだって気遣いは出来ますから。」
「あぁそっか、ありがと。バステト。」
「どういたしまして。では、そろそろ行きますよ」
「はい。」
私はそっと礼央くんの腕の中から抜け出る。
そばにあったブラウンケットを礼央くんにかけた。
「またね、礼央くん。」
寝てる礼央くんのおでこにキスをした。


