「ねぇ、あれ、持ってきてくれた?」

「うん。持ってきた。」


地図。


去年、リコリスが私と一緒に見たいと言っていたものだ。


私が教科書から切り離して持ってきたそれを広げると、リコリスの顔が輝く。


「ねぇ、ここがどの辺だか分かる?」

「うんとね、ここ。」


私はリコリスが夢中になって見ているこの国の地図、ちょうど東北地方と呼ばれる場所の一部を指差した。


「こんなところにいるんだ。それにしてもずいぶん大きな国なのね。」


興奮した様子のリコリスを見て、私は含み笑いを浮かべると言った。


「ねぇ、世界地図も見て」


さっきの地図は縮図の関係で大きく見えるだけだ。


世界はもっと広大なことが上手く伝わったようで、リコリスが驚いている。


「こんなちっぽけなところにいたのね、私達。」

「うん。ねぇ、リコリス、前から聞きたかったのだけれど、あの……」


私はそこまでは言えたが、次の言葉が、なぜか言いにくくて仕方が無かった。