「リコリス」と名乗ったその声を、私は忘れていない。


本名かどうかなんてどうでも良い。


最初に出会ったあの夜も、彼女はまるで私を待っていたかのようにそこにいた。


リコリスはとても綺麗だ。


大きな目、濡れたまつ毛、黒い髪。


「まるでお人形みたい。」


そう言った私の言葉に、リコリスはこう言って返した。


「あなたもお姫様みたいよ。」


お姫様。


私の学校での呼び名だ。


私はそう呼ばれるのが大嫌い。


私の赤っぽくて茶色い髪、リコリスよりもずっと白い肌、灰色の目。


生まれつき持った、金色の髪と青い瞳を持つ母から譲り受けた私の身体の特徴。