毎年九月の、父の故郷のお祭りの数日間。


私は父と母と三人で、父の生まれ故郷であるこの町に遊びに行く。


いや、遊びに行くといっても、それは父だけだ。


父は、私と母を置き去りにして町へ繰り出してしまい、母は祭りの食事の準備で町を走り回っている。


馴染みのない田舎町。


一人ぼっちの私に、祖父と祖母は、お祭りに行っておいでと、お金をくれる。


出店はにぎやかで、美味しい物も、楽しいお店もあるんだと思う。


だけど、そのお金は使ったことがない。


私はお祭りに行かず、その小さな港町で行われている年に一度の喧騒から抜け出して、川の上流の方へ向かう。


川は途中で他の川と合流し、そこから私は、私が来たのとは別の川を、今度は下流へ下っていく。


それが海までに行く途中。


川は木々の生い茂る林へ突入し、道は細くなる。


それでも林の中の道を進むと、少しだけ開けた小さな空き地に出るのだ。


誰かの私有地なのかもしれない。


だけど、彼女は毎年そこにいた。