3時休憩からの2時間で、全部の荷物を運びきった。


 途中の食器棚とか腰が抜けるかと思ったが、なんとか持ちこたえられた。


 オレ達が仕事を終えたのは18時半前。


 汗だくになったTシャツを着替えて、玄関脇に置いていたリュックに詰め込んだ。


 下の作業ズボンは、近くの大型量販店で買ったオレの一着だけの作業着だ。


 現場系の仕事に行く時はいつもこのズボンを履いて行く。


「龍一君、帰るぞ」


 オレはトラックの助手席に乗り込んだ。


 10月を目の前にした秋風が、東京に闇を呼ぶ。


 その時、トラックに搭載された旧式の車載ラジオが、19時の時報を告げた。


 最新型よりも、こういうアナログな物の方が味があっていい。

 
 オレは助手席に座りながら窓の外を眺(なが)めていた

 
 運転席に乗る加藤さんが、今日だけで何本目か分からないタバコふかしながら尋ねてくる。


「なぁ、今年17歳って言ってたよな? 誕生日はいつだ?」


「10月です。10月の5日」


 中学の時に母親が倒れて以来、誕生日をしてくれるのは友達だけだった。