「ほら、大丈夫でしょ?」

 バルコニーに向かった美樹がカーテンを開ける。

 私は一瞬身を強張らせたけど、美樹の言う通りそこには何もなかった。

「嘘だ……」

 こんな事があるわけない。

 だって私ははっきりと聞いたし、はっきりと見た。

 それなのに美樹には聞こえてもいなければ、見えてもいないと言う。

 一体、どちらが正しいのか。

 頭が混乱してくる。

 そもそも、幻聴や幻視というのは、あんなにもはっきりとしているものなのだろうか。

 私がおかしいの……?