私は少しだけカビ臭い図書室の扉を開け、彼の姿を探す。 「イヴ?」 私は幾重に重なる本棚の奥へ踏み入った。 人の気配が感じられなくて、ふいに感じた孤独に、少し不安になる。 しずかな雨の音が、屋根を叩いている。 私が歩くたびに、湿気を帯びた床の木目がギシギシと軋んでいた。