メビウス・レイン


彼が本を読もうとする様子がないので、私は口を開いた。


「前から思ってたのだけど、イヴって、不思議ね」


「──え?」


不意を突かれた彼が、長い睫毛を上下させる。


「だって、自分のこと、あんまり話さないじゃない。図書室以外で会った事もないし。……名前だって」


イヴ、という名前は、彼にとても似合っていると思うし、好きだけど。


「変?」


「ううん。そうじゃないの。私、イヴのこと、本当は何にも知らないんじゃないかって、たまに不安になるから」