メビウス・レイン


彼は立ち尽くす私に気付くと、端正な顔を少しだけ歪めて微笑んだ。


「こんにちは」


不思議な人だと思った。

もちろん校舎の中で彼に出会ったことは一度もなかった。

一度すれ違っただけでも、十分に目立つ彼を忘れることなんて有り得ないだろう。