今は昔…平安の…いずれの帝の御代でありましたでしょうか。

ある一人の公達(きんだち)がおりました。

名を、藤原惟雪(これゆき)…。
左大臣様の御子息で、内裏の覚えもめでたく…少将として御上(おかみ)に仕えておいででございます。

左大臣邸には数多の花木があり、少将は童の頃より、特に松を愛でておいでのようで…皆からは、「若松の君」と呼ばれていらっしゃいます。

ところがこの少将、大の女人好きで、お気に召された女人がいれば、屋敷につれてくる始末………。

そんな少将が此度出逢って女人は………ではこれから、若松の君の生活を、若松様の乳母(めのと)の…この常春(とこはる)がお話致しましょう………。

皆様方も…どうかお聞き遊ばしませ………。