あ、でもひとつだけあるかもしれない…。


1週間前に植えた桜の苗木を思い出した。


高校に入学する前に土手沿いに植えた桜の苗木。
今日まで毎日水を上げていた苗木。今日もいつも通り水をあげていた時、発作が起きたのであった。


出来れば、あの桜が将来、たくさん花を咲かせられればいいな。
そして、道行く人々が目を奪われるように、大きく成長して欲しいな…。


あたしは桜の苗木に願掛けしていたのかもしれない。
この桜の成長を見れるようにって…。


でも、もう時間がない。
分かってる…。


大きく成長した桜を想像する。
枝を桃色に染め、人々を泡沫の夢へと誘う。


涙が一滴頬を伝う。