むぎゅっと両頬を掴まれ、口角をあげさせられた。
「声に出して、笑うんじゃよ。笑うことは、幸せを呼びこと。笑うことは、人に幸せを与えられるんじゃよ。」
ほらほら、というように掴まれている頬に痛みが走る。
「山田さん、痛いれす…。」
「痛いじゃろ、それが生きているってことじゃよ。」
あたしはなんも言えなくなった。
「桜ちゃんが笑うことで、不幸になることはないんじゃよ。」
「はは、」
10年後の世界にあたしは存在していないことを知った。
「はははは…」
でも今、あたしは生きている。
「はははははは」
おかしいよ、矛盾している。
「ははははは!」
矛盾過ぎておかしい。
「ははははは!」
笑いながら、泣いた。

