あたしは息を吐き、高鳴る鼓動を抑えた。
意を決して、墓石の裏へと回る。



そこの文字を読み上げる。
「笹本桜。享年15。2016年4月16日…」



「おい、桜ちゃん。急にどうしたんだよ。ここ、あの江本さんの娘さんのお墓だろ?どうしてこんなところに来たんだよ?」



若葉も何が何だか分からない様子であった。



「ごめんね、若葉さん。こんなところに付いてきてもらって。」



あたしは若葉に背を向けるように話す。



「ちょっと、確かめたいことがあるって話したじゃん?」



「確かに言ってたな。」


くるりと若葉を向き、微笑みを浮かべる。
「今、完了しました。」




「はぁ?何を完了したっていうんだよ?」



若葉は心配そうな顔をしていた。
あたしは、微笑むことを辞めないで言った。
「あたしが10年前の4月16日に死んだってこと。」