「へー、今年は長い間花を咲かせてるな。」
声をかけられた、帰り道。
今まで地面ばかり見て、歩いていたことに気付く。
何だろうと顔を上げると、そこにはあたしが植えた桜があった。
夕焼けに染められた桜はきれいであった。
「知ってるか?桜の花言葉。」
「花言葉?」
「そう。桜は淡白とか純潔とかって言われてるけど、フランス語でわたしを忘れないでって意味もある。」
わたしを忘れないで…
「この桜を植えた人も、こう思っていたんじゃないかな?」
一生懸命に桜の木を植えていた10年前のあたしの姿が映る。
散りゆく命だけど、
ここで生きた証を残させて…
この桜を見てみんながあたしをおもいだして…
若葉の言葉と重なる
「ーみんな、わたしをわすれないでいてー」
そのとき、時間が動きだした気がしたんだ。

